千葉県野田市の虐待事件について

『子供からのＳＯＳ』にコメントを頂き、書きたいと思っていたこの事件のことを書こうと思います。

あなたはこの事件に対してどんな印象を持たれましたか？私は自分の結婚生活のことを思い出し、久しぶりに動悸がしました。心臓がバクバクし、気づけば息を止めていました。

人を顔で判断してはいけないとはいうものの、今まで虐待事件で捕まった人の印象は、金髪などでばっちり化粧してたり（逮捕時と別人）、中学生のヤンキーのような恰好で、目線やポーズもそれなりな感じでプリクラやツイッターなどにうつっている人という感じでした。大人になりきれなかった人たちという印象です。

でも、今回逮捕された父親の写真を見ると、真面目で温厚そうで、とても子供に暴力を振るうようには見えません。実際、職場での評判は悪くなく、「授業参観に行ってきた」など家族思いをうかがわせる発言もあったようです。

この2面性が、怖いのです。まさにモラ夫ですよね。

ネットニュースのコメント欄には、母親に対する批判があふれていました。「母親失格」「子供を守れるのは母親だけなのに」でも、私は批判なんかできません。私があの母親の立場でした。もちろん母親の完全な味方はできません。なんとかもっと早く逃げてほしかった。そう思います。ただ、そもそもの元凶は父親の暴力なのに、どうして？どうして責められるのはいつも母親なの？と憤りを感じます。

『子供をえこひいきする。一人だけ攻撃する』で書きましたが、母親が子供をかばうことにより、夫の怒りが余計に収まらないということもあります。今でこそ、モラ夫から5年以上離れたからこそ、そこでもう別れることを決めてほしいと思いますが、当事者には難しいと思います。

「お前なんかが育てられない」「やってみろよ」「ママが馬鹿だと困るねー」「教育がなっていない」…など、私が浴びせられた言葉の数々。この母親にはどれだけの言葉の暴力が、降りかかっていたのでしょう。教育委員会も言いなりにしてしまうほどの父親ですよね。

以前には親族も相談機関に話をしにいっていたようだし、一度離婚もしている。この夫婦にどんないきさつがあったかはわかりません。でも、暴力の相談もしていたのに、再婚し、1歳の次女がいる。夫婦の年齢差は10歳。いろいろな暴力により、逃れることができなかったのかなと想像します。行動しても何も変わらないと絶望したのかもしれません。

だから今言いたいのは、絶望する前に動いてほしい。行動できるうちにしてほしい。いきなり別居しろということではありません。明日は我が身と思った方もたくさんいると思います。逆に、ウチはそこまでじゃないからと、さらに我慢を重ねようとしている方もたくさんいるかもしれません。

「どうしたら夫に怒られないか」
そればかりが24時間ずっと頭の中を支配した。 （中略）
児童虐待防止法では、子どもへの直接的な暴力だけでなく、配偶者への暴力（DV）も児童虐待であると定義している。しかも、子どもの面前で暴力を見せることだけではなく、常に暴力的で緊張感が充満する空気の中で生活させることが虐待なのだ。
経験上、被害者がどんなに加害者を怒らせないようにと努力しても、被害者の努力やがんばりで加害者の虐待行為をやめさせることはできない。

『野田市虐待死　DV受けていた母親が「この子さえいなければ…」と追い詰められる負の連鎖』

「AERA dot. より」